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……それに、ボクシングしてる親父、すごく楽しそうだった。じいちゃんに反対されても頑なに日本チャンピオンの夢を追い続けてた。親父がそれだけ熱中するボクシングの世界に、俺も入りたかったんだ」
天井を見上げて、貫一さんは懐かしい目になった。
「親父は目覚ましい戦績を残せないまま37歳で引退したけど、やっぱりボクシングが好きだったから、今度はチャンピオンを育てるって夢を持って、うちのジムを建てたんだ。
全然儲からないどころか赤字で、じいちゃんの遺産がないとやっていけなかったけど、おふくろもおっとりした人だったから、夢ばっかり語る親父をニコニコ支えてた。
親父は指導者として優秀とは言えなかったけど、面倒見のいい人好きのする性格で、練習生も20人くらい集まってくれた。
俺もその中に加わって練習した。ジムの中は狭くて全員入りきれないから、隣の公園や河原でトレーニングして……いま考えるとありえないけど、楽しかったな」
「そうですか」
貫一さんの過去が聞けて嬉しい。
笑顔で相槌を打ったが、そこで彼の表情が翳った。
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