煩悩と決意の大晦日

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当時、福岡に長浜ジムと交流のあるジムがあり、そこは吉田ジムとも繋がりがあったので、その関係で何度か試合をしたらしいが、長浜さんは一度も貫一さんに勝てなかったらしい。 「……あれは、あいつが真剣にやってなかったからだ。いっつも腑抜けたツラしてまったく腰の入ってないパンチ打ってきやがる。弱い俺と本気でやる気がなかったんだろうが、それならそれで俺と試合しなければいいのに、何度もオファーしてくるし……だからむかついて、あいつの前歯折ってやった。まぁ勝ったところで、その頃のあいつは既にランクから落ちてたから、ランカーにはなれなかったけど」 長浜さん……。 気持ちはわかる。 俺だって貫一さんは殴れない。 しかし、長浜さんは学生結婚したらしいから当時すでに妻子がいたはずだ。……まぁ、こんな天使に出会ってしまっては妻子がいても惹かれてしまうだろう。気持ちはわかる。 妻子がいるから告白はできないけれど、貫一さんの近くに居たくて、わざわざ福岡にジムを建てたのだ。 嫌がらせをしていたのも、貫一さんを追い詰めて自分のジムに引き込むためだったのだろう。 だからってあんな回りくどいやり方をしなくても……と呆れたとき、ふと、あることに気づいた。
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