1)朝の日常

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トキといとこのアサギの故郷である、今だ精霊が棲む深山の果てー草深の里。 神木を守る一族のふたりが祖父の葬儀『送り』で見た樹木の精霊たち「おどり木」。 細長い胴体に三本の足、三本の腕のようなものに小さな葉っぱのような緑片がいくつもついている。  アサギの荷物の中に紛れていたこれは小枝タイプだ。アサギは知らない間にと驚いていたが、いや、あれは確信犯だ。連れてきたに違いない。もしかしたら、祖父の『送り』の夜、おどり木たちが出てきたのは偶然ではなく、アサギが呼んだのではないか。いつもあの森で遊んでいたのではないか。そうでもなければ、アサギがキッキと名付けたこいつが、あんなにも懐いているわけがない。トキには小ばかにしたような態度をとる。アサギのペットのようなものだとすると、トキは完全にペットより格下だ。 アサギが一言。 「朝飯」  キッキは目鼻口がないのっぺらぼうのくせに、キキッとおかしそうな笑い声を出した。 トキはおもしろくない。唇を尖らせて着替え出した。
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