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しばらく僕も佐久間も黙ったままでいた。
ようやく見つけたものの、何を話せばいいのかわからなかった。
「森野君、取り乱してごめん。
まさか会えるとは思わなかったんだ。」
「佐久間さん、僕は君にあの日のことを謝ろうと思ったんだ。君を傷付けるつもりはなくて、ただ僕は…」
「言わないで。」
突然彼女が僕の言葉を遮った。
「お願いだ。森野君。その続きは言わないで。」
「どうして。僕はただ君が」
「お願いだよ森野君。そこから先を言われてしまったらもう私は…。」
彼女はまたポロポロと涙を流し始めた。
こんな彼女を見るのは初めてで僕はどうしたらいいのかわからなくなった。
しばらくすると佐久間がぽつぽつと話し始めた。
「森野君、話さなければならないことがある。」
彼女は意を決したように僕を見てそう言った。
「あの日、あのあとの出来事を君には話しておくべきだと思う。聞いてくれるかい?」
僕が頷き、そして彼女が語り出す。
あの日の真実を。
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