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あの放課後の会話以降、僕は自然と佐久間を目で追うようになった。 黒く長い髪は艶やかでその白い肌はまるで淡雪のようだった。ほっそりした指先が作り物のように美しく、その所作を眺めては常々美しいと思っていた。 放課後を告げるチャイムの音で僕は早急に美術室へと向かう。 かなり急いで向かったにもかかわらず、到着すると彼女がすでに待ち受けていた。 「やあ、遅かったじゃないか森野君。」 窓際に座って外を眺めていた彼女はそう言うとへにゃりと笑ってひらひら手を振った。 「君が早すぎるんじゃないの?佐久間さん。」 「楽しみがあると時の流れが早くなるんだよ。」 「それは体感であって実際に早くなるわけじゃないだろう?」 なんだかおかしくなって僕が笑うと彼女は宝物を見つけた子供のように目を輝かせてこちらに近づいてきた。 「いいね、君の笑った顔は初めて見たがいつもよりも何倍もいい表情だ。」 なんとも恥ずかしいことを平然と言ってくれる。ただ、佐久間から言われると悪い気はしなかった。 「今日は何を描くんだい?」 本当は昨日まで描いていた絵の続きを描こうと思っていた。だが、彼女との出会いで描きたいものが変わってしまった。 「君を描きたい。」
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