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「しゅーうーちゃんっ」
「宮原…またお前か」
「今日も秀ちゃんはかわいいねぇ。
はやく俺と付き合ってよ」
「ないない。うるさい」
「俺にだけ冷たいとこもすてきーっ!」
(…うざい。)
明るめの茶髪に天然パーマ、
タレ目がちな目とすっと通った鼻筋。
スラッと伸びた手足はモデルのような体型で、
雑誌に載っててもおかしくなさそうな見た目だが、
宮原は見た目通り中身もチャラいらしい。
毎日毎日俺にまとわりついては、かわいいだのすてきだの、付き合ってだのとせわしない。
わざわざ俺なんかに言わなくても、
こいつなら選び放題だろうに…。
たまたま大学のサークルで知り合った宮原は初対面からずっとこんな感じだ。
最初は明るいし話しやすいから、ちょっとノリのいい友人、という感じだった。
褒められたり好きだと言われるのは流石に最初は恥ずかしかったが、いつもこんな調子だから告白じみた台詞も冗談だと思って軽く流すようになった。
とは言え、それが本気か冗談かたまに分からなくなることがあった。
「宮原、いい加減にしろよな」
「んー?何がぁ?」
「だから!そういう」
「好きだよ、秀ちゃん。
そのままのきみが好きだ。」
さらっと少女漫画みたいなことを言う。
台詞そのものは真っ直ぐで、聞いていて何だかむずむずする。さっきまでヘラヘラ笑ってたのに急に真面目な顔をするもんだから、一瞬ドキリとしてしまった。
危ない危ない、流されちゃ駄目だ。
後ろで見ていた女子たちから「きゃああ!」という悲鳴が聞こえる。黄色い声っていうんだっけ。
ていうか何だ、そのままの俺って。
宮原とは大学ですれ違うかサークルの集まりくらいでしか会ってないし、そのままの俺なんて見せたことないぞ。
俺大体猫被ってるしな。
「だから、早くちゃんと俺のものになってねっ」
語尾にハートか星でも飛んでそうな調子で言い放ち、ウィンクして宮原は去っていった。
「なんだ、やっぱり冗談なのか…?」
結局よく分からなかった。
ていうか、ちゃんと?って、なんだ。
どういう意味だろう。
何かもう分からないことだらけだ。
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