ありのままのきみを

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「秀」 ひとり混乱していると、後ろから名前を呼ばれた。 聞き馴染みのある、低くて落ち着いた声。 静かだけど、遠くまで響き渡りそうな、 澄んだ透明感のある声。 「零、授業終わったの?」 「うん」 「じゃ、食堂行こうぜ」 高校からの友人である青山は、宮原と違ってとても大人しい、落ち着いた奴だ。 切れ長の瞳は表情によっては冷たい印象を与えることもあるが、色素の薄い、灰色のその瞳の中にはまるで花が咲いているように見えて、ずっと見ていると吸い込まれそうになる。 目元に大きめのなきぼくろがあり、癖のない髪が風に煽られるたびに、伸ばされた前髪からチラッと覗くのがやけに色っぽい。 青山の背が高いせいで、こいつと話すとき俺はいつもちょっと見上げる形になる。 長いさらさらの前髪は彼の綺麗な瞳を隠してしまうが、下から見るとちょっと覗く宝石のような瞳が、 いつも真っ直ぐに俺を見て話すその輝きが好きだ。 恥ずかしいから絶対言わないけど。
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