ありのままのきみを

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ありのままのきみを

「ありのままのきみがすき」という言葉が嫌いだ。 というか、俺にはよく分からない。 「ありのままなんて、キレイなわけないのに。」 ラジオから流れる曲に、俺は独り吐き捨てた。 最近流行りのラブソングとかでよく聴く言葉だ。 勘違いしないで欲しいが、別にその言葉が悪いって言いたいわけじゃない。 ただ、俺にはよく分からないんだ。 「ありのまま」ってどういうことだろう。その人がどのように振る舞おうと「自分」という存在からは逃れられないし、どうしたってその人はその人だ。 あるがまま、自然な姿が美しいひとになら、「ありのままのきみがすき」というのも頷けるだろう。 でも、俺はそうじゃない。 俺は俺自身のありのままが素晴らしいとは到底思えない。 これが他人事なら、「そんなことないよ、あなたには良いところがたくさんあるよ」なんて、無責任に励ますことも出来るだろう。 でもどうしたって人は自分のこととなるとちょっと厳しくなるもんだ。多分。 少なくとも俺はそうらしい。 端から見たら善行と思える行動も、俺は俺の考えが分かるから、実はその行動がエゴだってことも分かってる。 つまり俺から見たら俺のその行動は善行じゃないってことになる。 面倒くさい奴だと自分でも思うが、そこまで考えちゃうのはもう性分なのでどうしようもない。 まぁつまり、そういうのが積み重なって、 俺は俺の「ありのまま」が嫌いになってしまった。 だから俺は、自分の「ありのまま」というやつを繕うことにした。 俺は俺のそのままの姿が美しいとは思えないから、せめて周りの人たちを不快にしないように、一緒にいて楽しい奴を演じてきたんだ。
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