54人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
#
夏休み最後の登校日。
高3の教室内の空気は重々しい。
「久し振りー。夏休みはどう?」
「……それ、聞く?」
「受験生 存在するの 夏休み……」
仲良しの華ちゃんは沈んだ空気を断ち切るように元気よく私に声を掛けた。
「久し振りーっ!幸!元気にしてた?」
『成績下降中の受験生は遊んだらダメ』という理由で、休み中、親からLI◯E他一切のSNS類を禁止された私は友人とも殆ど連絡を取っていなかった。
「数学漬けの毎日だけど元気」
苦笑しつつ言うと「私は英語漬けー」と半泣きの声が返ってきた。
高3にとって、この夏休みがキツいのは皆一緒。
登校日が数回あるのも、この大変さを皆で一緒に乗り越える為かもしれない。
私は個別で新先輩に数学を教わっていることを華ちゃんに話した。
「……しん先輩?」
「2コ上のイケメン先輩。覚えてない?」
「嘘?!超絶イケメンな高梁先輩?!美男美女カップルで有名な。どこの大学?」
「H大学」
「さっすがフルスペックイケメン。通ってる大学までソツがない。あの美人さんとはまだ付き合ってるのかなぁ」
「……さぁ。プライベートなことは一切、話さないから」
乾いた笑いに顔が引きつった。
「それもそっか。高梁先輩が高校生の時、幸、接点あった?」
「全然」
即答する。
最近まで接点なんて殆ど無かった。
有名だった先輩を私は知っていても、先輩が私を知る筈も無い。
最初のコメントを投稿しよう!