この空の下で、キミに

6/6
前へ
/15ページ
次へ
 その後の1週間は、先輩に会いたくなくて、屋上に行くのを俺が避けた。  次の週には、先輩に謝りたくて……。  そんなことを言い訳にしながら、やっぱり会いたくて。  俺は毎日屋上に上がった。  けれど先輩は、居なくて。  電話の番号も知らないから、連絡も出来なくて。  無視されたり、拒絶されるのが怖くて。3年の教室まで行くことも、出来なかった。  3月1日。  3年の先輩達の卒業式。  俺はマヌケにも、最後に先輩が来てくれるんじゃないかと屋上に上がった。  先輩が来てくれることはなかったけれど。  屋上から、帰って行く先輩を見ることが出来た。 「あ……あの人……」  和美さんだ、と先輩の隣に居る女の人を見る。  何やら先輩が言ったことに反応して、卒業証書の入っている黒い筒を振り上げていた。 「先輩…………笑ってら……」  和美さんの卒業証書の筒を腕で受けながら、先輩は笑っていた。 「…あーあ。相変わらずの、バカヅラ」  遠くても、判る。  ふふんッと俺が笑ったと同時、先輩が振り返った。  見えてる筈もないのに、しゃがみ込んで隠れた。 「ふっ……ふふっ…………っ……」  フェンスを掴んで、肩を震わす。  友人達と、和美さんと。  校門の向こうに姿を消す先輩を、陰から見送った。 「……先輩……卒業……おめでとぅ……ス……。ほんと。……おめでと……ッス……。……先、輩………。里見、先輩……………」  俺。  里見先輩のことが、好きでした――。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加