この空の下で、キミへ

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「あー、アレだよ。今日ホワイトデーじゃん。和美にお返ししてきたトコなんだ。他にも何人かもらってたから、他の娘には郵送して……」 「…………」 「なんスかそれ。――自慢?」  言いながら、密かにいっぱい貰っていたことにショックを受ける。 「まぁなー。俺、モテっからさ」  ニヤリと笑った先輩を軽く睨んで、ああ、和美さんには直接渡したんだな……と小さく笑った。 「ちゃんとお返しとかするんッスねー」  ちょっと意外ッス、と言うと、「なんでだよ」と軽くケリが入った。 「ちゃんとお返ししたぜー。和美には飴。マシュマロ渡そうと思ってたら、マシュマロ嫌い、とかアイツ言うんだぜー。ワガママだっつの。マシュマロ旨いのによー」  グチる先輩に、ハハッと笑う。  失恋した身としては複雑だが、やっぱり先輩の居る『この空間』は穏やかで、嬉しかった。 「――あ。あれッスか。俺にも何か買ってきてくれたんスか」  そんなのいいッスのにー、と続けようとしたのに、「いいや」とあっさり言われる。 「……………………」  ――何しに来たんだよ、あんた。  軽く殺意が芽生えた処で、「え、なに。何か欲しかった?」と訊かれる。 「……いいえ。そう言やフランスでも、貰った女の方はお返ししなくてもよかったッスね、確か」  あんたは女じゃないケドな。  俺のスネた様子に、「アッハ」と先輩が笑った。 「お前にはコレ、やろうと思ってさ」  ピラッと、二つ折りの小さな紙を渡してくる。 「何スか?」  広げてみると、数字の羅列。  090 から始まってるから、ケイタイの番号のようだ。 「コレって……」 「そ。俺のケイタイの番号。――お前、知らなかったろ」 「ええ、まぁ……」  これからも遊んでくれるってコト? 「ヒマな時は電話していいってことッスか?」 「まぁな、そんな感じ」  寝転んだままの先輩が、頭の後ろで手を組み目を閉じた。
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