この空の下で、キミに

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 手ぶらで教室に戻った俺に、友人達は「パン売り切れてたのか?」とおかずをくれようとしたけれど、「いらね」と断った。 「それより眠ィから寝るわ」  そう言って、机に突っ伏して残りの昼休みを過ごした。  午後の授業も、ただ、窓の外を眺めて受けた。  放課後になってようやく、俺は屋上へと上がった。  ――ここって、こんなに寒かったっけ?  フェンスに背を預けて座り、膝に顔を埋める。 「…………今日だけだ……」  今日が終わったら、俺はちゃんと、いつも通りになれるから。  明日からはちゃんと、先輩ともいつも通りに話すから。  だから。  だから、今日だけ――。 「お。放課後に居るなんてメズラシーじゃん」  バッと顔を上げる。  カバンを小脇に挟んだ先輩が、俺を見て笑っていた。 「――先輩こそ。めずらしいッスね。普段は放課後に来たことないのに……」 「まぁなー」  ノンビリ答えた先輩は、当然のように俺の隣に座る。 「いやー。お前今日1回も来なかったからさー、ちょっと心配んなって」 「心配?」 「そ。今日バレンタインじゃん」 「あぁ……」  なおざりに答えた俺に、先輩が顔を覗き込んできていた。
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