1 光と影

3/6
前へ
/137ページ
次へ
 ボールを追いかけては()けて、あっちへ行ったりこっちへ行ったりする速い足も。ボールを取っては投げる、綺麗な形の長い腕も。大きい声で笑って、怒って、また笑う、元気な顔も。  その全部がまぶしくて、僕は目を細めちゃう。口が、笑っちゃう。 「かっこいいなぁ……」  かっこいい。律を見るたび、そう思う。  みんなもそう思うから、律がいるところに集まるんだ。みんな、律が大好きだから。  そんなこと考えてたら、いきなりボールがこっちに飛んできた。僕の手がそれをキャッチする。 「真白(ましろ)っ! こっち、パスッ!」  手を振りながら駆け寄ってくる律は、笑顔で僕の名前を呼ぶ。  心に羽が生えて、ふわーって、高く浮かんだ。    きらきらが、声にもまぶしてあるみたい。その声が、僕を呼ぶ。たったそれだけで、たった三文字の名前が、ものすごく透き通って聞こえる。 「いくよ」  立ち上がった僕が思いきり投げたボールは、おりこうさんに、きちんと律の手元に飛んでった。 「サンキュッ!」 「どういたしまして」 「お前、やんねーの? そこで見てるくらいなら入ってくりゃいいのに」 「僕はいいよ。律を見てるだけで楽しいから」 「えーっ、何だそれ。変なやつ。ま、やりたくなったらいつでも言えよっ」  さりげなく優しい言葉を置いて、みんなのところへ戻っていく律。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

463人が本棚に入れています
本棚に追加