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「ええと、尼馬寛人っていいます。サラリーマンです」
僕は名乗った。
「怪しいのぅ。ここは超高級ホテルや。普通のサラリーマンが何で、こないなとこに泊まるんや?」
誠司が突っ込む。
僕としては、あんまり聞かれたくなかったのだが……、
こうなったら、答えるしかない。
「ええと、会社の花見の時に、ビンゴゲームがあって、その景品で……」
「怪しいですね。そういった景品なら、普通はペアチケットだ。なのに、君は一人で来ている」
「ええと、その……」
口籠る僕に、
「正直に答えなさいッ」と、御神楽が詰め寄った。
なので、
「……おっしゃる通り、もらったのはペアチケットです。……でも、僕、友達も恋人もいないんで、……誰も一緒に来てくれる人なんていないんで……」
正直に告げた。
それを聞いた皆は無言で、一斉に目を伏せてしまっていた。
遠い目をしている僕に、
「かつ丼でも、食べますゥ?」と、ガマさんが優しく言ってくれた。
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