ホテル・ヴァンパイア

7/14

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「ええと、尼馬(あんま)寛人(ひろと)っていいます。サラリーマンです」  僕は名乗った。 「怪しいのぅ。ここは超高級ホテルや。普通のサラリーマンが何で、こないなとこに泊まるんや?」  誠司が突っ込む。  僕としては、あんまり聞かれたくなかったのだが……、  こうなったら、答えるしかない。 「ええと、会社の花見の時に、ビンゴゲームがあって、その景品で……」 「怪しいですね。そういった景品なら、普通はペアチケットだ。なのに、君は一人で来ている」 「ええと、その……」  口籠る僕に、 「正直に答えなさいッ」と、御神楽が詰め寄った。  なので、 「……おっしゃる通り、もらったのはペアチケットです。……でも、僕、友達も恋人もいないんで、……誰も一緒に来てくれる人なんていないんで……」  正直に告げた。  それを聞いた皆は無言で、一斉に目を伏せてしまっていた。  遠い目をしている僕に、 「かつ丼でも、食べますゥ?」と、ガマさんが優しく言ってくれた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加