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 女は魚眼レンズから外を確かめる。  そこにいたのは一人の男だ。  もちろん知らない男である。  女がいぶかしんでいると、ドアの向こうから男が言った。  何でも男は、先程一人でいる女を見かけて、その様子が酷く寂しそうだなと思ったということだ。男は丁度、今から部屋でウエスタンスタイルの夜を満喫しながら高級ワインを飲もうと思っていたところだったらしく、どうせなら一緒にどうかと、つまりは誘いだった。  女も軽薄ではない。  彼氏がいる身だ。  街で言われていたら、無視していたことだろう。  ただ、ウエスタンスタイルの非日常的な雰囲気と、彼への恨みと、そしてどうしようもない寂しさが、女の心を動かしていた。 「良いですよ。飲みましょう」  女は扉を開けた。  女は立派な大人である。その意味は理解している。  間違っているとは知っていたが、それは結局、自分の楽しみを裏切った彼氏のせいだと、そう結論付けていた。 「確か、棚にグラスがあったわ。そこに座っててね」  そう言って女は棚に手を伸ばす。  瞬間に……、  ……あれ……?  何だろう?  女の首筋にチクリとした痛みがあった。  視界がグニャリと歪む。  足が崩れる。  意識が薄れていく。     
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