ホテル・ヴァンパイア

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 そうして、ガマさんを宥めること数分。  僕等は互いに自己紹介をすることになった。  まぁ、半ば職務質問のようなモノだったが、確かに、僕等は互いに互いを知らない。  僕は周囲を見回す。  何だか、皆が曲者に見える。  最初に話し始めたのは強面中年だった。 「ワシぁ、広島で建築会社をやっとる、松木(まつき)誠司(せいじ)っちゅうモンや。生れも育ちも広島のチャキチャキの広島っ子じゃ。このホテルには休暇で来とる」  そう言って強面中年・誠司は豪快に笑っていた。  この男、怪しい。 「じゃあ、次はアタシね~~」と言ったのは、強面中年・誠司にベッタリくっついている派手な若い女だった。 「アタシは松木(まつき)里穂(りほ)で~~す。誠ちゃんの奥さんです」 そう言って里穂という女はピースをする。 「御夫婦だったんすね」と、知的な青年が言うと、 「おう、兄ちゃん。何か文句でもあるんかい?」と、誠司が青年を睨みつける。 「止めてよ。誠ちゃん。ほら、帰ったら、アタシ、誠ちゃんの好きなカレー作ってあげるからねッ」  里穂が誠司を宥めると、 「おう。里穂のカレーは、手足が痺れるほどに絶品じゃけんのう。もう、ワシ、里穂のカレー食った後は、たまに本当に手足が痺れて仕方ないわ」     
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