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コンコン。
ドアをノックする音がして、思わずドアの方を見る。
はい、と小さく返事をすると、ドアから入ってきたのは見慣れた顔だった。
30年一緒に過ごしてきたメンバーの顔。
『松本くん…さっきのプロデューサーのやりとり偶然見ちゃって… その…大丈夫?』
その表情はさっきのマネージャーとは明らかに違う、本当に心配してる優しい表情だ。
「何だよ、ヒロ。
お前だって言われんだろ?」
『まぁそうなんだけど…
でもあんな無神経な言い方しなくったって!』
プリプリと怒るその様子は、何だかひどく懐かしいものを見たような気持ちになった。
「お前、もうそのプリプリ怒るのやめろよ。
40過ぎたおっさんなんだから」
そう笑顔で言うと、
「ありがとな。ちょっとお前のこと好きになってきたかも」
ニヤつきながらヒロを見た。
ヒロも笑いながら、
『結構好きなくせに』
と返した。
懐かしいそのやり取りが、何だかとても苦しくなって、思わず下を向く。
そのまま、ありがとう、と小さく呟いた。
ヒロはただ、うん、とだけ答えた。
お互いに考えてる事が手に取るようにわかるのに、それを言葉にする事が出来ない。
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