8-6 時の境界線 

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 美紗はカーテンを大きく開け、疲れたように溜息をついた。「いつもの朝」なら、まだ彼の体温を感じながらまどろんでいる頃だ。昨夜の熱が夢であったかのように、ひっそりとした部屋の空気が寒い。  あの後、電車もない時間帯に永田町へと戻ったあの人は、徹夜で働いていたのだろうか……。  そんなことを思った美紗は、はっと目を見開き、作り付けの机の上に置かれたテレビをつけた。  さほど大きくない画面には、「緊急速報」の文字が躍っていた。  日本近海の地図と首相官邸の映像が、交互に映し出される。センセーショナルにまくし立てる男性アナウンサーは、日本海の排他的経済水域付近で国籍不明の潜水艦らしきものが「飛翔体」を打ち上げたらしいという内容を、繰り返し伝えていた。 *本編「カクテルの紡ぐ恋歌」の295ページ「8-7 休日の職場 ( https://estar.jp/novels/23759533/viewer?page=295)」に続きます。
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