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美紗はカーテンを大きく開け、疲れたように溜息をついた。「いつもの朝」なら、まだ彼の体温を感じながらまどろんでいる頃だ。昨夜の熱が夢であったかのように、ひっそりとした部屋の空気が寒い。
あの後、電車もない時間帯に永田町へと戻ったあの人は、徹夜で働いていたのだろうか……。
そんなことを思った美紗は、はっと目を見開き、作り付けの机の上に置かれたテレビをつけた。
さほど大きくない画面には、「緊急速報」の文字が躍っていた。
日本近海の地図と首相官邸の映像が、交互に映し出される。センセーショナルにまくし立てる男性アナウンサーは、日本海の排他的経済水域付近で国籍不明の潜水艦らしきものが「飛翔体」を打ち上げたらしいという内容を、繰り返し伝えていた。
*本編「カクテルの紡ぐ恋歌」の295ページ「8-7 休日の職場 ( https://estar.jp/novels/23759533/viewer?page=295)」に続きます。
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