何か

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何か

 ──────  ────────……  ──っていう夢を見たの。  まるで夢を見なかった僕と入れ替わるように、彼女はそう話してくれた。  考えてみれば、あなたの夢ってまるでモグラみたいね、と悪戯に微笑みながら。  モグラとは可笑しいね、と僕も笑って答えたけど、内心、もしかしたらそうなのかもしれない、とも思った。  ──そういえば、モグラはよく地上に出て太陽の光を浴びると干からびて死んでしまうって言われてるけど、あれって誤解なんだよ。  ──えっ、そうなの?  ──モグラが地上に出てくるのは、地下でのモグラ同士の争いに負けた時なんだ。地下から追い出された時なんだよ。それで地下に戻れなくなって、餌を食べられなくなって……。  ──つまり、餓死ってこと?  ──そうだね。モグラは独特の匂いを放って他の動物を寄せ付けないから、猛禽にもほっとかれてあんな風に放置されるんだね。  どこかで得た知識を彼女に披露すると、彼女は顔を伏せて言った。  可哀想な生き物だね、と。  じゃあ僕は、どうしてあんな夢を見るのだろう。  ……まあ、それはどうでもいい事か。  考えたって仕方がない。  毎日毎日繰り返される日常に、身を溶かすしかないのだから。  それに、夢が示す深層心理なんて。  意味が有って無いようなものなのかもしれない。  だけど、そこに何か意味を見出だそうとするのは、実に興味深い事だ。  事実、そういう価値観を共有できるからこそ、僕は彼女と一緒にいて話をする事が出来るのだから。
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