奈麗(なうら)

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少女は、月が照らす雲一つ無い空を見上げていた。 田舎町であるこの酒匂川町では、夜になれば月と星々も煌びやかに光り輝く姿が見える。 少女はコートを羽織っており、制服姿なのにも関わらず、どこか大人びた印象を与える。 そして、たった1人で夜の境内のベンチに座っており、悲しげに空を見上げていた。 光り輝く星とは対照的に曇った表情をしている。 溜息と同時に白い吐息が漏れた。 少女の名前は奈麗(なうら)。 今は12月終わりの冬休み。今年で高校三年生となる。 彼女の表情を曇らせるのは決っして受験シーズンだからなわけではない。 奈麗はK大学へと推薦入学も決まっており、ほかの受験メンバーの生徒達に比べれば余裕があった。 奈麗にとって、夜の境内のベンチからこの夜空を眺める事が日課となっていた。 こじんまりとした廃境内で、ベンチと錆び付いた社殿、があるのみだった。 時刻はとっくに22時を過ぎているというのに帰る気配を見せない。 ふと幼い頃の記憶を辿る。 (思えば私のこれまでの人生は、全てがこの夜の闇のように暗く、果てのない迷路の中を生きていた。
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