眠らせて

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 ああ、まただ……。  夢の中なのに、意識のある状態。私はよくこの状態に陥る。そういう時の私は決まって金縛りみたいになっていて、手足が動かせない。  そしていろんな気配を感じてしまうのだ。  ベッドの周りを誰かがグルグル歩いてたり、枕元で誰かが顔を覗き込んでくる。目を閉じていても視線を感じるし、中にはいやらしい気配をまとった何かに身体をまさぐられることもある。「あ、これは男だ」とその時ばかりは性別まで分かってしまう。「こわいこわい」と頭の中で思うのだけど、指一本動かせない。でも私の意識は必死で起きようと抵抗を試みる。  目を覚まさなければ、もっと恐ろしい気配を感じそうで。 「……んっ……」  呻き声と共に肩が動く。寝返りを打つことに成功した。金縛りも解け、嫌な気配もパッと消える。気配は夢と同じだ。目さえ覚めてしまえば、霧のように消えてしまう。 ……はぁ、良かった。  ベッドからゆっくり立ち上がり、廊下を出てトイレを済ませ、キッチンで水を飲む。もう四月も中旬だけど、夜はまだ冷える。はやく暖かいベッドへ戻らなきゃ。  廊下を歩く。歩いても歩いても、寝室へたどり着けない。  そして気づく。  私、まだ……夢の中にいるんだ……。
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