眠らせて

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「それ、まずくない?」  コンビニ弁当を食べていた同僚の麻衣が箸を上下にブンブン振る。 「うん。朝はグッタリだよ。繰り返し夢見てるみたいで、寝た気がしないもん」  黙って私の話を聞いていた後輩の琴美ちゃんがボソッと言った。 「千春先輩。ハサミ、家にありますか?」 「ハサミ? もちろんあるけど。と言ってもキッチン鋏だけど」 「んー……それだと危ないかな」 「なにが?」  琴美ちゃんは立ち上がり、休憩室の隣のオフィスへ入ると直ぐに戻ってきた。手には事務用のキャップがついたハサミ。 「こういうのがいいです。一応刃物なので。これを枕の下に入れて眠ってください。そうすれば夢のループを断ち切れると思います」 「ハサミだけに?」  麻衣が目を丸くして言う。琴美ちゃんがコクンと頷いた。 「夢の中から戻ってこれなくなる可能性があります。本当に、それあまり良くない現象なので」 「そう……なんだ……」  にわかには信じ難い話。でも、確かにあの夢は怖いし、疲れる。ハサミで夢を見なくなるのなら試してみる価値あるかも。 「マジで? え、私もキャップのついたハサミ買って帰ろ~」  麻衣が隣でキャアキャア怖がると、琴美ちゃんがしれっとした顔で言った。 「麻衣先輩は大丈夫ですよ。そういうのゼロなんで」
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