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「どうだった? ハサミの効果は!」
翌日の昼、麻衣が興味津々な表情で尋ねてくる。
「あー……うん」
言い淀む私に、琴美ちゃんが無表情のまま言った。
「効果ありませんでしたか?」
「うん……」
昨日も同じだった。何度も何度も繰り返し起きる夢。今度こそ、ちゃんと起きた。そう思うのに、しばらくしてまだ夢の中だと気づく。消えたと思っていた気配は消えておらず、自分がベッドの中で横になってるのをうっすら意識した途端、覗き込む気配を感じてしまう。その気配の性別は分からない。ただなんとなく女性かなって思うだけ。
「そうですか……」
琴美ちゃんが顎を指で擦り、どうしたものかと思案顔になる。
「あれじゃない? ほら! マリッジブルーってやつ。結婚式まであと二ヶ月だし!」
麻衣が閃いた! って表情で箸をブンブン振る。
「えー? そうかなぁ。別にブルーにはなってないと思うけど……」
幼馴染の彼、アキラとはもう十年の付き合いになる。高校時代から付き合ってるし、人柄もアキラの家族のこともよく知ってる。同じ町内だし、互いの家族も顔見知り。不安はハッキリ言ってなにも無い。強いて言えば、他の人と付き合ったことがないから、本当にアキラに決めていいの? という気持ちが多少あることくらい。でも、アキラほど穏やかで、器の広い人はいないんじゃないかなって思う。喧嘩らしい喧嘩もしたことが無いのは、絶対アキラの性格がいいからだ。私はどっちかっていうとせっかちだし、直ぐにワタワタしちゃう。そんな私を「大丈夫だよー」と笑って宥めてくれるアキラに今まで何度も惚れ直してる。
カッコイイとか、お金持ちとか、そういうのは求めてない。だからやっぱりアキラがいいって思う。
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