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『8月19日
エンジェルを出そうとしていたところを博士に見られてしまった。研究のためならいかなる犠牲も惜しまない、あの人に。私のこの行動をどう捉えたのか……もうおしまいだ。くそ!──』
そこから先は何かの文字を書いている途中で止まっていた。震えている文字、倒れた椅子や床に散らばった書類、荒らされている部屋の状態から、この時に何か起きたことは間違いないだろう。現に、遼太朗がこれを見つけたのは机の下からだった。
「何だ? これが本当なら、昨日から生物兵器は出されていたってことじゃないか。流天……聞いたことないな」
「これも恐らく、俺たちが来るだいぶ前に書かれていると思う」
智孝が憤りにも似た感情を含めた口調で、それに同意するように遼太朗は静かに意見を口にした。
「え? でも待って。それじゃあMARSは生物兵器が脱走したのをもっと前から知ってたってこと? それなのに、このテストを実行したの? 先生たちにも知らせずに?」
ショックを隠しきれない様子で有羽は言った。
「ねえ。俺たち、嵌められたんじゃない?」
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