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いやでも、負けたとすればMARSから連絡がくるはずだ。流天そのものがMARSとも考えにくい。MARSには朧を欲しがる理由も、字守育成施設(俺たち)を敵に回す理由もない。やはり、一部のメンバーが流天と組んだと考えるのが一番自然だ。
「お父さん、今どこにいるの?」
「わかんない。寝る前までは一緒にいたけど、起きたらいなくなってた。今も探してたの」
「そっか……先生。こういう時って、保護目的ってことでいいんだよね?」
この施設内から連れ出してもってことか。確かに、ここにいてはいつ生物兵器に襲われるかもわからない状態だ。安全と思われる場所まで移動しても、とやかく言われないだろう。それにこの子は俺たちの貴重な情報でもある。
「いいぞ」と答える智孝を見て、女の子は嬉しそうな顔をして話しかけた。
「お兄ちゃん、先生なの? 何先生? マチカの先生は女の人なんだよ」
すっかり警戒心を解いている『マチカ』と名乗った少女に、有羽が代わりに答える。
「先生の名前は智孝先生っていうの。私は有羽。それでこのお兄ちゃんが遼太朗くんで、こっちのお兄ちゃんが諫美くん──いっちゃんだよ。覚えた?」
「えーっと……うん、覚えたよ!」
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