SCENE13:出発前【有羽】

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 諫美くんだって嬉しいくせに。普段、牙白(ガラ)──遼太朗(りょうたろう)を兄のように慕っている諫美を見てきた有羽は心の中で呟いた。  すると、別のテスト生と対面を終えた野田実春が近づき、智孝に人数が揃ったことを告げた。任務の詳細を話すために教壇へと立つ字守達。有羽も諫美と一緒に近くの席へと腰を落とした。 「今回の任務の内容は先程も聞いたと思うが、木須沢(きずさわ)にある工場の調査だ。ここで朧の使用と魄の反応が確認されている。朧はどうやら生物兵器の開発のために研究されているようだが、その詳細を調べてくることが目的だ。朧の回収や生物兵器の調査は、MARS(マース)が引き継ぐことになっている」  MARSというのは字守の精鋭チームであり、ここ、字守育成施設の基となった存在だ。そのリーダーである樫倉紘人(かしくらひろと)が亡くなる前まで、智孝も所属していた組織だった。 「工場の敷地内に建物は三つ。研究施設と製造工場、居住施設だ。我々が向かうのは研究施設で、階ごとのチームに分かれて調査を進める。1階を上原(うえはら)率いる1班が、2階を結城(ゆうき)率いる2班が、最後、遠藤(えんどう)率いる3班は3階を調べていく」  名前の挙がった字守たちは各々のチームの前に立つ。自分達は3班だ。 「建物の内部構造なんだが、実はよくわかっていない。地下があると予想されているが、その有無も定かではない。何か情報を得たら班同士、連絡を忘れずにな。一応、建物の外部構造を見せておく。野田(のだ)」  実春(みはる)は了解の意を表すように頷いた後、三つの建物の外部構造のデータをそれぞれの机に設置されているモニターに映し出した。
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