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諫美くんだって嬉しいくせに。普段、牙白──遼太朗を兄のように慕っている諫美を見てきた有羽は心の中で呟いた。
すると、別のテスト生と対面を終えた野田実春が近づき、智孝に人数が揃ったことを告げた。任務の詳細を話すために教壇へと立つ字守達。有羽も諫美と一緒に近くの席へと腰を落とした。
「今回の任務の内容は先程も聞いたと思うが、木須沢にある工場の調査だ。ここで朧の使用と魄の反応が確認されている。朧はどうやら生物兵器の開発のために研究されているようだが、その詳細を調べてくることが目的だ。朧の回収や生物兵器の調査は、MARSが引き継ぐことになっている」
MARSというのは字守の精鋭チームであり、ここ、字守育成施設の基となった存在だ。そのリーダーである樫倉紘人が亡くなる前まで、智孝も所属していた組織だった。
「工場の敷地内に建物は三つ。研究施設と製造工場、居住施設だ。我々が向かうのは研究施設で、階ごとのチームに分かれて調査を進める。1階を上原率いる1班が、2階を結城率いる2班が、最後、遠藤率いる3班は3階を調べていく」
名前の挙がった字守たちは各々のチームの前に立つ。自分達は3班だ。
「建物の内部構造なんだが、実はよくわかっていない。地下があると予想されているが、その有無も定かではない。何か情報を得たら班同士、連絡を忘れずにな。一応、建物の外部構造を見せておく。野田」
実春は了解の意を表すように頷いた後、三つの建物の外部構造のデータをそれぞれの机に設置されているモニターに映し出した。
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