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自分達が上がってきた階段の方を見つめながら、有羽は歩みを止めた。
その様子に皆の足も止まる。「どうした?」と声をかけると、有羽は視線をそちらに定めたまま返事をし、後に「今、人がいたように見えたの」と告げた。
「人? 研究員か?」
「ううん、女の子みたいだった。小さい……といっても小学生くらい。低学年の」
「女の子?」
まさか。こんな時間に。一時は騒然としていたであろう外に出て、わざわざこの建物に入った?
「見間違えたかな? 私見てきていい?」
「ダメだ。こんな所に子供がいるわけないだろ」
だがしかし、騒動で起きてしまい、逃げるにも親とはぐれてしまったのかもしれない。そんな気持ちを代弁するように有羽は反論する。「ここに逃げ込んできた研究員の子かもしれないよ?」と。
「……わかった。じゃあ、俺も一緒に見に行くから、遼太朗、先に調べていてくれ」
「了解」
事前にコピーとして渡されていたカードキーを渡し、智孝は先を進んだ。有羽も小さく謝って後をついてくる。
敵の可能性もあると警戒しながらも階下を覗くが、そこには何の姿も気配もなかった。
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