第二章 シュートチャンス

3/4
前へ
/55ページ
次へ
ゴールを見据えて構えた瞬間、目の前にシロが飛び込んで来て、ボールが宙に浮いた。そして気づいた時には、彼女が凄まじいスピードでドリブルを始めていた。 一瞬の出来事だった。 “わざわざくれた得点のチャンスを、無駄にしてしまった…。” 先ほどの感情はどこへやら、今度は目の前が真っ暗になった。そして、“自分だけ正解が分からない”という現状が怖くなった。なぜみんな、迷いなく走り出すことが出来るのか、桜井にとっては不思議でならなかったのである。 その後も何度かパスが回ってきたが、あたふたしているうちにボールを持っていかれてしまうことが続いた。ドリブルをしようとボールをつけば、高すぎて2回ほどで奪われてしまった。以降、桜井がボールを持つと、すぐさま味方が近づいてきて、手を差し伸べるようになった。守備に徹底しているはずのミラコーでさえ、センターラインまで上がってきている。 罪悪感だけが、むくむくと起き上がって来て彼女を包んだ。そして、思わず下を向いた。出来ることならば、今すぐここからいなくなりたいと思った。レベルも世界も違うメンバーと、私はなぜ同じ舞台に立っているのだろう。桜井を押しつぶしてしまいそうな圧迫感は、彼女をさらに委縮させ、“バスケ”から遠ざけた。 得点版の数字が20-20になった時、金やんから“10分休憩!”の声が飛んだ。     
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加