第三章 奇妙な静寂

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あれから“公式の”練習は行われなかったが、週末に一度、3時間ほど地区センターを借りて練習したらしい。厳しい親を説得するため、教授は“塾でセミナーがある”と言って出てきたそうだ。桜井も明日、5限の自習時間を返上して個人練習に励むことになっていた。無論、自ら決めたことではない。デンジャーが誘ってきたのである。隣のクラスの千葉ちゃんも手伝いに来てくれるらしい。彼女たちは昔から、何かと私のことを気にかけてくれた。“デンジャー”という強い存在がいなければ、私はこの学校でも一人になっていたに違いない。 机の位置を微調整しながら、桜井は小さくため息をついた。デンジャーのことを考えると、やはり3回に1度くらいは作戦会議に顔を出した方がいいように思えた。もうしばらくすると、くじ引きのメンバーが帰ってくるだろう。今更帰るのも気まずい。桜井は箒を片付けると、いつもは名乗り出ないゴミ捨てを手伝い、時間を潰すことにした。 5分ほどして教室に戻って来ると、すでに黒板にトーナメント表が書かれており、のんちゃんが対戦相手を書き始めたところだった。桜井も、急いで後方に加わる。活気に満ちた黄色い声はどこへやら、閉め切った教室には、チョークの走る音しか響いていなかった。表彰台への期待からだろう、クラス中の人たちが皆、前方に視線を集めているのが分かる。ほどなくして振り向いたのんちゃんは、張り詰めた奇妙な空気をひしひしと感じながらも、ゆっくりと口を開いた。 「まず、3Aは別ブロック。決勝戦まで対戦しない。私たちの1回戦は高1C、2回戦は、シードの2D。2日目の準決勝に進めたら、多分3Cが上がって来るんじゃないかと思う。」 「この中で、練習試合組めるのはどこ?」 「そうね…体育の時間が一緒なのは…あ、ないかも。」 「うそ。」     
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