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振り向いたライオンは、豪速球のように飛んできた“ゼッケン13”を付けながら、バツが悪そうに“サンキュ”と手を挙げた。応援席が、にぎやかな笑顔で包まれる。張り詰めた一本の糸が、瞬く間に緩んでいくのを感じた。審判の催促により、ダッシュで乗り込むメンバーたち。一列に並び、一礼する。ジャンプボールの二人が前に出た時、金本は藤垣の肩を叩いた。背中を下降して消えていく手と、一瞬流れた二人の時間。自分たちには決して追いつくことの出来ない、雲の上の覚悟。背筋の寒気と心臓が吸い付きそうになって、白石は身震いした。
センターサークルに沿って、二色のゼッケンが交互に並ぶ。まぶしい黄色と澄み切った青。私たちは後者だ。妨害しようと体の前に手をかざす中三から、金本は静かに距離を取った。数百人の意識が、サークルの中心に集合する。無音の空間を引き裂くように“ピ―――ッッッ”というホイッスルが鳴って、ボールが宙に浮いた。前髪から鋭い眼光をのぞかせた藤垣が、空高く舞い上がっていく。天窓から背中に受けた光が反射して、彼女の影をさらに大きくした。
「いぃぃぃぃッッッけぇぇぇぇぇぇ―――――――――!!!!!!!!!!!! 」
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