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第一章 ミスチョイス
青々とした木々に、まぶしいほどの陽光が輝き始めた、六月下旬。
突き刺すような日差しで、もはや日焼け止めは効果をなさなかった。
砂煙を巻き起こし、熱風をきって体育館に向かえるほどの元気など残っていない。
”蒸し風呂”に通ずる小さな扉に疾走していくメンバーを、桜井は遠くから見つめていた。
今の時期、体育館は地獄だ。
エアコンなんて気の利いたものはなく、たった二台の扇風機で風を回すしか方法がなかった。蒸し暑さがこもってイライラしているせいか、セミの声が嫌にうるさく聞こえる。
“今年も、とうとうやって来てしまった。”
体育館用のシューズに履き替えて、重い腰を上げる。
中からは、ライオンのような掛け声と、ゴールを決める気持ちのいい音が響いてきていた。
すでに、“デンジャー”と“シロ”が練習を始めているらしい。リーダーの“金やん”は、桜井ならば死んでしまうほどのスピードを出して、歩廊を疾走していた。
“私とは、世界が違う…。”
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