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「…チーム分け、見た?」
その時、後方の声にハッとした。“教授”だった。見ていない、見ているはずがない。そんなもの見なくても、大体分かっている。桜井が返答に困っていると、
「桜井さん、後半最後の5分だよ。」
と教授が続けてきた。
やはり私の出場枠は、二十分フル出場できる”あの三人”とは違い、たったの五分だった。 分かっていたはずなのに、改めて聞くとげんなりする。
「頑張ろ。」
「…うん…。」
「元気出しなよー。後半最後って、大事なとこだよ?ね?」
”「ね?」って何だ?「ね?」って‥……。”
そう言ってひらひらとかけていく教授の気が知れなかった。心の中で首を振る。”頑張れない”―――それが桜井の結論だった。
後半最後の五分といえば、試合が最も盛り上がる時であり、勝利の瞬間に立ち会うということでもある。だが、それは同時に、敗北の瞬間に立ち会うということでもあった。
最悪の場合、最も挽回が期待され、引き分ならばフリースローが行われる大事な局面になるかもしれない。私のボールは、右に投げたら左に飛んでいく。昔からその軌道は、“ある意味奇跡”とまで言われていた。フリースローどころの騒ぎではない。私は、試合当日の歩廊を埋め尽くす群衆や歓声、天に祈りをささげるメンバーを想像した。いくら私をフォロー出来るメンバーだからといって、これは完全なミスチョイス…。焦りと不安が、ノミの心臓をつついて動けなくなった。
「桜井さぁん!」
振り向くと 、いつの間にか集合したメンバーが二手に分かれ、金やんが説明を始めたところだった。
「景気づけに紅白やっから。」
そう言ってゼッケンを突き出したのは、デンジャーだった。
170近い身長と、がっしりした体格をもつデンジャーを前にすると、やはり萎縮してしまう。彼女の突き刺さるような低い声と鋭い目が、さらに凄みを感じさせる原因だった。私の肩を叩き、颯爽と歩き出す彼女。嫌々ながら、桜井もゼッケンを付けて走り出す。急がなければ、もう試合は始まりそうだった。
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