最期の願い

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永く生きた、魔族にしては短いかも知れないが、俺は500歳を超えている。 幾度となく見てきた、魔族も人間も殺し合いながら作り上げてきた世界。 互いに啀み合い、畏怖し、憎悪を持って争ってきた世界。 だが、互いを消さなければならないと信じる理由が明らかに欠如している。 大事な者を殺されたから、大切なものを奪われたから、侵略してきたから、邪魔だから。 まるで子供の喧嘩の理由みたいな事ばかりで争っている。 だが、永く生きてきた中で、俺が契約したコアは言っていた。それを信じるのはあまりに馬鹿げたことかも知れない。 それでも、否定する理由が無い、有り得る現実だった。 「…世界を作った神がいるとして…。これが神の筋書き通りの現実だとして…。平和な世界が訪れる保証も無ければ、それを願い抗う者はこの世に居ないんだ…。」 だから、俺は戦ってきた。暴力に頼るわけでもなく、言葉に頼るわけでもなく、俺が神の描いた血生臭い世界を無くしてやると決意して、全てを受け入れてきた。
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