最期の願い

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分厚くのし掛かる黒い雲の隙間から、そいつは現れた。 俺の城で、俺の留守中に好き勝手暴れ回った挙句、城にいた奴等は全て蹴散らしてきたとかなんとか、真っ直ぐに俺を睨んで吐き捨てやがった。 そいつの話を黙って聞いていて、確信をした。 これが最期の戦いになるんだな、と。 「大義名分を掲げ、幾度となく世界各地に姿を現したお前が、この世界を混沌に陥れた元凶だ。だから、お前を完全に消滅させる。」 真っ直ぐに、曇り1つない輝く瞳は純粋そのもの。自分が正しいと信じ切っている目だ。 それもそうか、こいつ、まだ14歳だもんな。 しかも、剣を握ってまだ2年しか経ってないんだっけ。人間てのは恐ろしいな。 「そうは言うが、お前、何回か俺に助けてもらってるだろう?」 初めて会った時なんて、ゴブリンの集団にタコ殴りにされてやがったからな。可哀想過ぎて助けてやったんだっけ。 俺がそう言うと、目を見開いて顔を真っ赤にして、思い切り口を結びやがった。面白い奴だ。 「っそれでも!お前を倒して世界を平和にするんだ!」 やっぱりまだ子供だな。話なんて無駄かもしれん。 構えもしていない俺の事なんて御構い無しに、目の前のそいつは特攻してきやがった。 でも、ただの特攻じゃない。 強力な身体強化をかけて、反射魔法をかけて、右手の剣には俺が嫌いな光属性を付けて、左手は氷魔法の用意をして。 ああ、お手本通りの戦術だな。 「ここで終わりだ!魔王フリート!!」 瞬時に俺の目の前に駆け込み、剣を振り上げて叫ぶそいつ。 ああ、いいよ。最期くらい楽しみたいんだ。 教科書通りの言葉を吐いてやるよ。 「ここはお前の墓場だ、勇者ディアス!」 2人の間にある僅かな空間から、俺は剣を出現させてディアスの剣を受け止めた。
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