最期の願い

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突き刺さった氷の弾丸は凄まじい音を奏でて爆発する。 この魔法が面倒なのはここからだ。 炸裂と同時に氷の刃を辺りに撒き散らし、触れた箇所から時間経過と共に凍っていく。 その速度は決して早くは無いが、その氷は簡単に溶かせない。 「…まぁ、だからどうしたってとこだがな。」 そう呟いて、俺は笑ってやった。 飛散して迫り来る氷の刃、だが、俺の体の周囲に突如として炎の渦が巻き起こる。 ディアスが氷魔法を得意としてるのは知っている、何度も報告が上がって来てたからな。 だからこそ、用心に用心を重ねて、俺の右腕でもあるヴァジュロスの奴が、俺にかけた魔法がある。 守護炎陣、宝華。 対象の周囲に膨大な魔力の分布を察知すると自動で発動する守護魔法。 俺に対する氷魔法はこいつで防ぐ事が可能なんだ。 俺の視線の先、地面に剣を突き立てて悔しそうに歯噛みしているディアスが見える。 自信あったんだろうな、今の。 相手が俺じゃなきゃ、これで終わってたろうに。 「…おいおい、立ち止まるには早いんじゃないか?」 よく見れば、ディアスの呼吸が既に乱れている。 体力なさ過ぎだろう。 だが、当然と言えば当然、神位魔法なんて使ったんだ、魔力を相当持ってかれてるはずだ。 疲れない方が化け物だ。だが、ちょうどいいか。 「なあ、なんで俺が悪者だと思ってるんだ?」 単純に、ずっと思ってた疑問だ。世界の大半の人間どもは、俺を魔王と呼び、悪の権化だ親玉だと口にして、俺を殺しに来る。 魔物や魔族の中にも俺の命を狙う奴らは多くいるが、そいつらは俺に対立している奴らばかり。 こいつら人間とは根本が違う。 「なんで人間は、俺が魔王だと言い、俺を殺す事が平和に繋がると言ってるんだ?」 俺の質問が予想外だったんだろう、ディアスの顔から一気に力が抜け、唖然としてしまった。
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