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「…自分が何いってるか分かってるのか?」
頭に上った血が少しは下がったか、ディアスの口調が明らかに変わり、大人びたものになった。
まあ、どうせすぐ戻るだろうがな。
「俺は、自分の理想の為にこれまで戦ってきた。俺の信じる世界の為に、だ。」
「だから、自分に刃向かう人間を、動物達を、魔物達を殺すって言うのか?そんなの間違ってる!」
「いや、違うね。俺は自分から手を出した事は一度も無い。お前らが勝手に俺を殺しに来てるから、死なない為に戦うんだ。」
その過程で死んでいった全てのもの達を俺は弔い、悔やみ、自分を責め続けて来た。
だが、ディアスは違うようだ。俺が悪の権化であり、世界の災厄になっていると信じている。
俺を倒す事で、人間達は平和に暮らせるんだと信じて。
「俺を殺せば、俺がまとめ上げてきた全ての魔物や魔族が一斉に暴れ出す。統率を失った奴等は所構わず、お前らを襲い脅かす。それは平和と言えるのか?」
俺の問いに、ディアスは答えなかった。
それに対する答えを、持っていないんだろう。
俺が言った事は事実だからな、俺の配下にいる魔族は頭はいいが血の気の多い奴等ばかりだ。
俺が死ねば、人間達が魔界と呼ぶ俺達の住む場所から一斉に飛び出してくる。
誰も奴等を止められない、ましてや俺に反感を持っている奴等なんざ、止まる必要が無いんだからな。
欲求に忠実に、魔族の世界を作る為に、人間達の世界を蹂躙し、殺戮の世界になる。
「…だからと言って、魔王であるお前を倒さないと言うことにはならない。」
暫く黙っていたと思えば、考えてはみたものの結論は変わらない、か。
「お前は人間達を惑わし、脅かし、害を為す魔物達の王だ。少なくとも、今よりも酷くなるとは思えない。」
そう言って真っ直ぐに俺を睨みつけてきやがった。
やっぱり、まだまだ子供か。
「お前が思ってるほど、こっち側は単純じゃないんだよ、小僧。」
思わず、そう言ってしまっていた。
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