最期の願い

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「…終わりだ…。魔王…。」 言い聞かせるかのように、疲労の見える呼吸をしながらディアスが俺に言う。 終わり、なんてのは最初から分かってるんだよ、言われなくても。 「…世界に平和は訪れない…。」 だから、言いたい事がある。俺が目指したものと同じ世界を望む者には知っておいてもらいたい事がある。 それが永く、遥か先の世界にまで繋がるように。 「…魔界や人間界がどうであれ、お前が本当に争いのない世界を望むのならば、知っておけ…。」 そうだ、俺が魔王になる前に触れたこの世界の理。 揺るぎない根幹。 「…最後の言葉として、聞いておく…。」 ディアスはそう言って、俺の言葉を待つ。 俺がもう動けない事が分かっているからだろう。 両脚、こいつの剣で貫かれ、左腕は斬り落とされて、右腕も骨が砕けている俺の体。 「…ありがとよ…。」 そう言って、俺は懐にしまっていた物を取り出す。 今はもう、俺のものではない俺の持っていたコアの欠片。 それを骨が砕けた腕で必死にディアスに向けて差し出した。
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