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「あ、おはよう夕」
朝。いつも通り先輩であり幼なじみの彩香の家に迎えに行くと、珍しく既に家の前にいた。
普段はねぼすけなのに……今日は卒業式だから気合いを入れたのか。
「おはよう。今日はいつもみたいに動物の鳴き声のやつやらないんだね」
「ん……今日はしおらしくしようかと思ってね、夕」
少ししおらしく、俺の隣に並ぶ。普段ははしゃいで走り回るのに。具体的には昨日まではしゃいでたのに。相変わらず変なやつ。
「今日で一緒の登校も最後になるのかなー、夕」
「無事に卒業でしょ?なら最後だよ」
「寂しくなるねー、夕」
「……まあ、ね」
雲一つない快晴。春ののどかな気候が体を包む。
「へっへー、夕が寂しくなると思って、ほら見て、夕!」
じゃじゃんと言った感じで彩香が取り出したのは彩香そっくりのぬいぐるみ。
「どう?徹夜して作ったんだよ、夕!」
「卒業式前日に何してんのさ……」
「卒業するからこそだよ、夕!」
「今貰っても持っておけないんだけど……」
「ぐぬぬ……よし、じゃ私が持ってる。帰りに渡すから、絶対待っててね、夕!」
「はいはい」
帰りにまた会う約束をした。まあ、彩香が言わなくてもこっちからお願いするつもりだったから丁度いいや。
……今日の下校の時が、チャンス。
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