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混沌の中、声が聞こえた様な気がした。
──汝の欲する物は何か?──
俺の……欲する、モノ?
そんなの決まっている。
俺が、いつ如何なる時も欲するモノ、求める者はただ一人。
唯一無二にして絶対。俺の全て。
お嬢。
俺の脳裏にお嬢の姿が浮かぶ。
笑った顔、拗ねた顔、怒った顔、泣いた顔。
そのどれもが愛らしい。愛しい。
──強き愛──汝にリヒトを授け──
あぁ、お嬢。我が君。
俺の全ては貴女のモノ。
そう。髪の毛一筋、細胞の一欠片に至るまで。
そして貴女は俺の全て。
髪の毛一筋、細胞の一欠片だって誰にも渡さない。
俺の、俺だけのお嬢。
俺から彼女を奪うなら、俺は世界中を敵に回してでも奪い返す。
狂おしいほどに愛してる。
──何と邪な──ではナハトを汝に──
お嬢。お嬢。貴女の為なら俺の命など惜しくない。
──やはりリヒトを──
悪魔に魂を売り払ってでも。その後、悪魔を嬲り殺してでも魂を回収して貴女の傍に。
──いや、ナハト──
お嬢。お嬢。お嬢!
──あぁ、もう!面倒臭い!──
お嬢。お嬢の全てを全身全霊を賭けて愛します。
例え肉片になろうと骨になろうと。
──・・・・・──
「……リ……」
あぁ、お嬢の声が聞こえる。
「……リ! ……リ!」
泣かないで、お嬢。
例え死んでも俺は……俺は貴女を……。
「ユーリ! ユーリ!」
ペちペち。ペちペち。
子猫がじゃれつく様な感触が頬に当たる。
「ユーリ……起きて!」
……お嬢?
「眠り姫は王子様のキスで目覚めるのよね? なら、眠りユーリは私のキ、キスで……起きるかしら?」
お嬢の……キス?
そんな事をされたら、俺は?
答えは二択。
①あまりの幸福感でそのまま永遠の眠りへ。
②理性が異次元の彼方にぶっ飛んで本能の赴くままにお嬢を……(ピ────)
1:99の割合で②になる可能性が高い。
「ユーリ……」
ゆっくりと近付く気配に目を開く。
「きゃっ!」
至近距離のお嬢の麗しいご尊顔。ご馳走様です!
「ユーリ! 起きたのね!」
何故か俺を覗き込むお嬢。
……うん? 覗き込む?
そしてやたらと心地良い柔らかな枕は……?
ま、まさか……これは……お嬢の膝枕?!
俺は今、お嬢の膝枕で寝ている?!
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