29人が本棚に入れています
本棚に追加
「ダ、ダメです! 見てはいけません! 目を閉じてください!」
「え? どうして? だって……」
そこまで言ったお嬢が俺の身体の一部に視線をやりかけ、目を逸らして真っ赤になる。
「もう、治まったでしょう? ……その、光ってたのは」
股間の光は治まりましたが俺のナニの剣は治まるどころか貴女の言葉で少し大きくなっちゃいましたよ?
どうやら俺の興奮度が剣に影響するらしい。
まぁ俺のナニなので当然といえば当然か。
そこまで考えた俺の脳内に突如、警鐘が響いた。
「お嬢、伏せて!」
「きゃあ!」
咄嗟にお嬢を庇い、伏せた俺の頬を熱が嬲る。
ちりっと髪が焦げ、何とも嫌な臭気が漂う。
「ユーリ!」
「お嬢、このまま絶対に動かないでくださいね」
俺はゆっくりと立ち上がり、熱源に向き合う。
そこには紅いトカゲがいた。口から紅い舌をちろちろと覗かせて。
いや、違う。
アレは舌なんかじゃなくて本物の炎。
俺の頬を焼いたのも口から吐いた炎だったのだ。
炎を吐くトカゲなど、創作物語の中でしか知らない。
だが、今ここにいるのは紛れも無くソレだった。
「お前が何かなんてどうでもいい」
ちゃき、と剣を構える。
うん。自分のナニを握った事が無いとは言わないが、この向きでしかも両手で握るなんて経験は無いから、ものすごい違和感だな。
まぁ今のところはナニが握られてる感覚は無いし、ちゃんと剣の柄なんだが。
というかコレ、ちゃんと元に戻るんだろうな?
頭では何故か戻ると確信してるんだが、戻らなかったらどうしよう。
お嬢への愛は変わらないが、このままだとお嬢をめくるめく官能の世界へと誘う事が……いや、指や舌で何とか……だがやはり……ぐぬぬ。
「コイツを倒せば分かる事か」
今ソレを考えても仕方ない。
「とりあえずお嬢に仇なすモノは散れ」
トカゲが口から炎を吐き出すが、二度も炙り焼きにされてやる義理は無い。
「はぁッ!」
炎を掻い潜り、地面すれすれにスイングした刃がトカゲの口にめり込む。
「お前の吐く炎など……!」
そのまま足を止めず、力いっぱいトカゲの横を走る。
めり込んだ刃が食い込み、トカゲの口を拡張していく。
「俺のお嬢への灼熱の愛の炎に比べたら……!」
その勢いのまま、背骨を擦る様に擦り上げ、腰から刃を抜いた。
「蝋燭にも劣る、風前の灯火!」
トカゲの二枚おろし、完成。
最初のコメントを投稿しよう!