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俺を呼ぶのは主である『ひなみお嬢様』。
俺が仕える屋敷『龍大路家』のれっきとしたご令嬢である。
そして俺は代々、龍大路家に仕える『影』つまり専属SPの家系『東雲』の三男坊。
上の兄二人もそれぞれ龍大路家のご令息に仕えている。
姉もいて、こっちはひなみお嬢様の姉に仕えている。
んで、俺がひなみお嬢様の専属SPという訳だ。
まぁもちろん、俺は男でお嬢様は女性。
色々と問題はあったと思う。
いくら生まれる前から決められていたとしてもだ。
だが、人見知りするお嬢様が何故か俺にだけは懐き(泣かれた旦那様には恨み言を言われたが)、「ユーリ、ユーリ」と舌っ足らずな声で泣きながら俺を探すお嬢様に龍大路家の全ての者が陥落した。
俺? 最初から選択肢など無い。当然だろう?
「守るなら守れるだけの実力を示せ!」
と旦那様に言われ、ムダにやる気に満ちたヤツらにシゴかれた事は一生忘れない。
まぁ既に全員、返り討ちにしてあるが。それはそれ、これはこれ。
格闘技だけじゃない。
お嬢様が不自由しない様に、身の回りの世話は全て出来る様に、俺は努力を惜しまなかった。
おかげで今では料理も裁縫も一通り出来る様になった。
SPというよりも執事、いや、従者や近侍に近いか?
だが、それでいい。それがいい。
誰よりもお嬢様の傍にいて、お嬢様だけを見ていられる。
何と言う至福。
学校に俺がついていけないと知った時に三日、部屋に籠城したお嬢様を宥めるのには苦労したが。
それも俺と離れたくないが為なのだから心が痛んだ。
俺が送り迎えする事で、どうにか納得してくれた時は心から安堵したものだ。
そうして今日も俺はお嬢様を門で待っている、という訳である。
お嬢様が俺を見つけた時の嬉しそうな気配といったら、背中から春がやってきた様にすら思える。
無色無味乾燥した世界がお嬢様の色に染まっていくのがわかる。
あぁ、お嬢様。我が君。
貴女は俺の全て。
だからこそ、俺の全てで貴女を守ってみせる。
貴女が俺を呼ぶ限り。
俺はどこにいても駆け付ける。
あぁ、それこそ貴女の影となって傍にいたい。
一時たりとも離れたくない。
おっと。これ以上は俺の理性が崩壊してしまう。
気を付けねば。
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