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ぶるりと肌寒さを覚えて、野々山はむっくりと身体を起こした。こり固まっていた身体をほぐすように、ぐんと伸びをする。 気絶のフリで目を閉じていたら、そのまま眠ってしまったらしい。 畳に倒れていた上半身がとにかく冷えていて、暖を求めて頭から布団をかぶる。それにしても、なんだかやけに狭苦しい布団だ。まるで誰かが無理やり入りこんでいるかのようだ。 「さち」 野々山は布団を身体に巻き付けるように寝返りを打った。 「さち、起きてるでしょ」 黙ってやり過ごそうとしたが、二度目はうまくいかなかった。 腰辺りに絡みついた腕が、ぐんっと野々山を抱き寄せる。布団の中で触れ合った足があたたかい。志島は冷え性で、いつまでも冷たい足をしていた。野々山が嫌がっても、志島は自分が溜まっていたら無理やりに抱いた。口だけでいいからと、フェラを強要されたこともある。 嫌なことを思い出してしまった。 「うなじのとこ、ほくろがあるね。ちっちゃいの、二つ」 くすくすと楽しげな笑い声と共に、首筋に吐息がかかる。寒さとは違う震えが走り、野々山は吐息をこぼさないように唇を噛んだ。その間にも、座敷童の手は腰から太ももをたどっていく。くすぐったいとは思うが、嫌悪感はない。むしろ、もっと―― 「触ってほしい?」 「っ!」 考えていたことを見透かされたようで、野々山はびくっと肩を揺らした。驚きに心臓がばくんばくんと跳ねている。 「会ったばかり、だし……その前に、よく知りもしない相手と、そんなこと……」 しどろもどろになりながら答えると、座敷童がぐっと野々山の肩に手をかける。あっと思ったときにはもう、布団に身体が縫い止められていた。壁ではなく、座敷童の肩越しに天井が見える。 「知りたいことがあるなら何でも答えるよ。どんどん聞いて。質問受付中!」 肩で揃えてハーフアップにした黒髪が、さらりと揺れている。くっきりした垂れ目の二重に、つんと上を向いた鼻。甘さを残した細面の顔は、売り出し中の若手俳優でも通じるほどだ。きらきらと輝く目で見つめられるだけで、胸がきゅんとなる。 ダメだ、可愛すぎる。 軽く首を傾げ、質問を待っている座敷童にぼそっと聞いた。
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