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「座敷童じゃ呼びにくいから……名前、ないの?」 「あるよ! 青い葉っぱで青葉。青葉って呼んで! 名前名乗ったのなんて何年? 何十年ぶりだろ」 座敷童改め、青葉の顔がぱあっと明るくなる。 同じ布団に入っているのは人間ではない。これから先どうなるかもわからない、怪異の類かもしれない。だけど、浮気を繰り返し、無理にセックスを強いる志島より、青葉のほうがはるかにまともに思えてきた。それに何より、青葉の顔が好きすぎる。 ――俺、面食いだったんだな。 そう思うと、不思議と青葉に対する警戒心が薄れていた。 肩にかかる青葉の髪に、そっと指を通す。さらりと指の間からこぼれる黒髪を見ながら、自分からキスをした。ただし、触れるだけのかわいいキスだ。 間近で見つめた青葉が、大きく目を見開いた。直後に、ふにゃりと表情がほころぶ。 言葉を交わす代わりに、互いを知るためのキスを何度も交わした。 座敷童が住まう旅館から座敷童が姿を消し、代わりに縁結びの神が住みつくようになった。その神はとても人懐こく、恋に悩める人間の前にたわむれに姿を見せるという。そんな噂話がネットやSNSの一部で出回っていると野々山が知るのは、まだ先の話だ。
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