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人の良さそうな女将に案内された部屋は、びっくりするほど普通だった。ごく一般的な六畳間の和室で、お札が貼られているわけでも何らかの視線や物音を感じるわけでもない。
「夜になりますとね、天井を走る音がしたり、お部屋に遊びに来たりすることもありますから。その時は付き合ってあげてくださいね」
いぶかしげに部屋の中を見渡している野々山(ののやま)を気にした様子もなく、女将はにこにことそう言って部屋を出ていった。
5年付き合っていた彼氏の何度目かの浮気が判明して衝動的に新幹線に飛び乗り、やって来たのがこの座敷童が出るという旅館だ。
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