クリスマスには、チーズケーキでしょ!

4/4
前へ
/4ページ
次へ
 暗闇の中からたくちゃんの声が聞こえた。真っ暗なせいか。酷く硬い声だった。 「たくちゃん? 電気つけないと」 「ちょっとそのまま聞いて」  私の左手が何かに掴まれている。たくちゃんしか居ないはずだが、真っ暗闇のせいかほんの少しだけ怖い。 「実乃、あのさ」  ぬくぬくあったか三種の神器が揃っているはずなのに、左手だけ何故か冷たい。ひんやりとした感覚が指をすり抜けていく。 「……たくちゃん?」  その瞬間、ぱっと灯りがついた。眩しくて目を瞬かせる。たくちゃんを探すと、私に背を向けて電気のスイッチとお見合いしていた。 「たくちゃん?」 「ひ、ひひひ、左手」 「ひ、ひひひ、左手?」 「左手、見ろ」  左手、と言われて視線を移す。  すると、そこには。  誕生日プレゼントには相応しくない指輪。 「ぎゃーー! なにこれー!」  ひとしきり騒いだ私に、たくちゃんはしっかりと言葉をくれた。あまりにも嬉しくて号泣してしまった私の口に、たくちゃん特製のチーズケーキが押し込まれた。  甘くて美味しいはずのチーズケーキが、ほんのちょっぴりしょっぱかった。 「来年からは一緒にチーズケーキ作ろうな」 「……だぐぢゃぁぁあんんん」  明日仕事ということも忘れて、私は泣きに泣きまくったのでした。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加