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「一晩そこで反省してなさい」
「これに懲りたらもう優也くんに近づかない事ね」
彼女達の笑い声と足音が遠ざかっていく。
「待ってよ!私優也とはただの幼馴染だって言ってんでしょ!恋愛対象として見てないから!開けてよ!」
私は必死にドアを叩きながら叫んだ。努力も虚しく足音は小さくなり、やがて消えた。
「どうしよう……」
暗くて広い空間に、思わず泣きそうになる。
「どうしたの?」
「きゃっ!?」
背後から声をかけられ、悲鳴をあげる。
「あー、ごめんごめん。てか本当にどうしたの?君は……1年の桐谷美奈子さんかな?」
落ち着きのある男性の声が私の名を呼ぶ。
「そうですけど……。あなたは?」
「俺は河口大樹。2年で図書委員」
「あ、河口先輩だったんですね」
声の主が誰だか分かってホッとする。
河口先輩は常に読書をしていて、この学校にある本は全部読み尽くしたと噂されるほどの本の虫。
大人びて整った顔立ちにハッキリした性格で、自分目当てに図書室に来る女子達を追い返したなんて話もある。
「で、桐谷ちゃん。どうしたの?」
2度目の質問に我に返り、私は状況を先輩に伝える。
「あの、私の幼馴染に柳瀬優也っていうちょっと顔はいいけど性格に難アリのがいまして……」
「彼のファンに閉じ込められた?」
「そういう事です。すいません、先輩巻き込んでしまって……」
「桐谷ちゃんが謝る必要ないよ。とりあえずさ、スマホ持ってる?」
「まぁ、ありますけど……」
先輩の優しさに胸が軽くなると同時に、電波もWiFiも使えない環境でスマホがなんの役に立つのか首をかしげた。
「ライトつけてもらっていい?俺のスマホ机の上に置いたまんまだからさ」
「そういう事でしたか。ちょっとまっててくださいね」
合点のいった私はライトを付けると、先輩のスマホを一緒に探した」
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