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「あったあった。とりあえず手分けしてカーテン閉めるよ。1分でも長く、この暖かさを保ちたいからね。7時になると暖房は止まっちゃうんだ」
「そんな……」
先輩の言葉に、思わず愕然とする。12月中旬の真冬に暖房無しで一晩過ごすなんて考えただけでも身震いしてしまう。
「そんな不安がらないで?俺がなんとかするから」
「なんとかって……」
「とにかくカーテン閉めて。あと30分もしたら暖房止まっちゃうから」
先輩はそう言ってカーテンを閉め始めた。私も急いで手伝う。
カーテンを閉め切ると部屋は余計暗くなる。明かりは2台のスマホだけで、とても心細い。
「さて、桐谷ちゃんは甘いの好きかな?」
「え?……好きですけど」
あまりにも唐突な先輩の質問に拍子抜けしながら答える。
「ならよかった。隣においで」
先輩はパイプ椅子に座ると手招きをした。
「はい、好きなの食べてねー」
私が隣に座ると、先輩は自分のリュックサックをひっくり返した。大量のお菓子が出てきて、最後にジャージとコッペパンが落ちてきた。
先輩はジャージをどこかへ投げると、コッペパンを袋から出して半分にして片方を私に差し出した。
「ピーナッツクリーム、平気?」
「はい、大好きです。ありがとうございます」
私はコッペパンを受け取って1口かじった。ふんわりしたパンの食感に優しいピーナッツクリームの甘さに心が落ち着く。
「お菓子もいっぱいあるから好きなだけ食べてねー」
そう言われてお菓子の山をよく見てみるけど、みんな甘いものばかり。
「先輩、甘党なんですか……?」
「甘党っていうか、まぁ本を読んでて集中してると欲しくなるんだよねー」
いつ開けたのか、先輩はポッキーを食べながら言う。
暖房の音が止まり、静かになる。スマホを見ると7時ちょうど。
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