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わたしはやっとの思いで言ったのに、朔夜くんはとくに困ることも、動揺することもなく言った。その淡々とした言い方にショックを受ける。
自分でそうしてと言っておきながら、自分で傷ついているなんて。言わなきゃよかったと後悔しても遅いけれど、わたしは後悔の真っただなかだ。
最後の力を振り絞ってなんとか歩き出してみるけど、朔夜くんは無言のままわたしの後をついてきた。
家が同じ方向なのかな。そういえば引っ越し先はどこなんだろう。
以前はわたしの家から10分ほどのところにある大きなマンションに住んでいたけれど、同じところのはずはないだろうから。
「ほんとにここでいいから。鳴海くん、遠まわりになっちゃうと悪いし」
「別にいいよ。ここ、通り道なんだよ」
「どこに住んでるの?」
「橘の家からだと、歩いて15分ぐらいだよ。春山小児科って知ってる?」
「うん、図書館の先にあるクリニックだよね?」
「その近くの一軒家」
なんとなく場所を把握した。たしかに通り道。しかも、最短距離だ。
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