第1章 転校生と教師と猫かぶりのわたし

17/30
1085人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
 わたしはやっとの思いで言ったのに、朔夜くんはとくに困ることも、動揺することもなく言った。その淡々とした言い方にショックを受ける。  自分でそうしてと言っておきながら、自分で傷ついているなんて。言わなきゃよかったと後悔しても遅いけれど、わたしは後悔の真っただなかだ。  最後の力を振り絞ってなんとか歩き出してみるけど、朔夜くんは無言のままわたしの後をついてきた。  家が同じ方向なのかな。そういえば引っ越し先はどこなんだろう。  以前はわたしの家から10分ほどのところにある大きなマンションに住んでいたけれど、同じところのはずはないだろうから。 「ほんとにここでいいから。鳴海くん、遠まわりになっちゃうと悪いし」 「別にいいよ。ここ、通り道なんだよ」 「どこに住んでるの?」 「橘の家からだと、歩いて15分ぐらいだよ。春山(はるやま)小児科って知ってる?」 「うん、図書館の先にあるクリニックだよね?」 「その近くの一軒家」  なんとなく場所を把握した。たしかに通り道。しかも、最短距離だ。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!