第3章 彼女の事情

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「何度も電話したのよ!」  自宅に連れていかれ、さっそくお母さんに怒鳴られる。スマホの着信履歴を確認すると、その数はすごいことになっていた。 「ごめんなさい」  軽く事情を説明して謝ると、お母さんに盛大なため息をつかれた。 「お酒は一滴も飲んでいないそうですから」  ヨウくんがフォローしてくれるけれど、お母さんの怒りはおさまらない。 「まったく、お友達に誘われたからって、高校生がショットバーなんかに出入りしちゃだめでしょう。だいたい、夜に家を抜け出すなんて……」 「もうしません」 「あたり前です!」 「でもなんでわかったの?」 「築が教えてくれたのよ」 「えっ……。築のやつ……」  サッカーボールを買ってあげるって言ったのに。お母さんたちに告げ口したバツとして、誕生日のプレゼントは算数のドリル帳にしてやる! 「築のことを怒ったら承知しないわよ。築は天音の帰りが遅いから、心配して言いにきたのよ」 「心配……? わたしのことを……」  そうだったんだ。築はわたしに意地悪しようとしたんじゃないんだ。  涙目の築が脳裏に浮かんだ。わたしの帰りが遅いから……。後で築にも謝らなきゃ。
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