第3章 彼女の事情

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 それからヨウくんは遅めの夕飯を食べにお店に行き、わたしは築の部屋へ向かう。  ドアを開けると、ベッドから飛び起きたパジャマ姿の築が、「お姉ちゃん!」と泣きそうな顔で抱きついてきた。 「ずっと起きて待っていてくれたの?」 「うん。お姉ちゃん、帰ってこないから、僕心配で」 「築……」  わたしは築をぎゅうっと抱きしめた。  築は普通の小学5年の子より、ずっと幼い。身長も体重も平均以下で、学校の成績もあまりよくない。  だから同い年の子たちとうまくなじめなくて、遊ぶ相手もあまりいない。  病気ではないらしい。ちょっと成長が遅いだけなんだそうだ。  でも本当にいい子で、商店街の人たちにかわいがられているし、本人も学校の友達とサッカーができるように、よくひとりで練習していて努力家だ。 「ごめんね、築。おわびに、誕生日には約束通り、サッカーボールをプレゼントしてあげるからね」 「僕、ボールいらない。今持ってるのでいい。それより、また公園でお姉ちゃんとサッカーしたい」  サッカーボールより、わたしのことを選んでくれるんだ。これだから、わたしは築に甘くなってしまうのだ。
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